
楽譜を読めるようになってほしい=勉強的?
楽譜を読めるようになってほしい、と願うご家庭はとても多いです。しかし、いくらピアノの練習をまじめに続けていても、ただそれだけで楽譜がすらすら読めるようになるわけではありません。
「ピアノって楽しい!」「いろんな音を出してみたい!」と、自分からピアノで自由に遊びはじめる。そこからです。
最近のお子さん・保護者は、まじめに練習することが練習だと思っています。だから練習ができなくなると「やめた方がいいのかな?」と思うんですね。
でも、小学校を卒業したら、練習する時間そのものはどんどん少なくなっていきます。練習ができないからやめた方がいい…としたら、1か100の白黒思考ですよね。
「やらなきゃ」よりも、「おもしろい!」「もっと知りたい!」という気持ちを大切にしてほしいと心から思っています。
試行錯誤はあたまの整理の時間
最近のお子さんは、たくさんの習い事をしています。
そのため、ひとつのものをじっくりやってみるということ、その中で試行錯誤をすることが少ないように思います。
試行錯誤はこんがらがった頭の中を整理することでもあります。
ピアノの上達には、本当に長い時間がかかります。
やる気のあるなし、忙しさの度合いを無視して自分から練習に取りかかれるようになるまでに、まず数年。
次に、楽譜を正しく読み、リズムをしっかり理解できるようになるまでに、さらに数年。そして、そこから「どんな表現をしよう」「どうやって弾いたらきれいかな」と自分なりに工夫できるようになるまで、さらに数年かかります。
子どものペースで進むのが遅いか?早いか?ピアノのレッスン
なぜこうなるかというと、ピアノはその子自身のペースでしか進めないからです。焦っても、近道はありません。
多くの子どもが、5~6年かけてようやく“スタート地点”に立てるようになります。けれど、その頃には勉強や部活が忙しくなって、「続けたくてもピアノをやめてしまう」ことがとても多いです。
中学生くらいになると、やっと「ピアノの本当の楽しさ」が感じられる時期が始まります。音楽を自分なりに表現できる面白さや、深い演奏の世界はここから広がります。
でも、5~6年でやめてしまうと、多くの場合、「基礎を身につける途中の作業」で終わってしまい、それまで積み重ねてきた感覚も失われてしまいます。つまり、基礎が完成する前にリセットになってしまうのです。
本当の意味でピアノや音楽の楽しさや達成感を味わう前に終わってしまう ― これが現実です。
5-6年でピアノを終えてしまった人は、その作業をやることに時間がかかると思っていますから、基礎的な部分をやっていると時につまらなかった、と感じやすいです。すると「時間がないから」「また習えるようになったら」などと言いますが、そんな日は来ません。
できるだけ長い期間、習うことが次のハードルを越えやすくするのです。
ピアノは、弾いた量と上達が正比例しますので、たくさん練習ができないのなら、期間で稼ぐしかないのです。
・・・と54年ピアノにたずさわってきた自分は強く思います。
ピアノ(音楽)を習うのは、「楽しんだもの勝ち」です。ただ、楽しむだけでは続きませんし、上達にも地道な練習の積み重ねが欠かせません。その練習を面白いと思えるかどうか…自分が上達したと思える達成感を感じられるかどうか。
この「楽しさ」「楽しくない」はときに矛盾して感じられるかもしれませんが、両方そろってはじめてピアノの面白さを実感できるのだと思います。
