
幼児からピアノを始めれば、すぐに弾けるようになる? その幻想と現実
最近は「できるだけ早いうちからピアノを習わせたい」と希望される保護者の方が増えています。年中さん(4~5歳)で始めれば、早く上手になれるはず――そんな期待を持っておられる方も多いのではないでしょうか。
けれど実際は、「早く始めれば早く上達する」という単純なものではありません。ピアノは、すぐに両手で上手に弾けるようになる習いごとではないのです。
幼児期レッスンで本当に身につくこと
この時期に育つのは「ピアノで遊ぶ・音楽で遊ぶ」感覚、「音やリズムに親しむ耳や体」、「集中して聴く力」など、いわば“土台”です。 ここがしっかりできて、やっとのちに譜読みや演奏表現につながっていきます。
「早くからはじめた」=「早く曲が弾けるようになる」では決してありません。 特に小さいうちは、手を動かす機能も、集中力も、理解力もまだまだ発展途上。焦ってもご本人が追い付かず、結果的に自分のペースで進むしかないのです。
家庭環境と音楽の関わり
年中さんから習っていても、早く上達するお子さんがいるのは事実です。でも、それは多くの場合、家庭で音楽や楽器がとても身近にある環境だからこそ。 親が楽器を弾いていたり、音楽を楽しむ時間があったり、家の中に音楽が常に流れていたり――そうした日々の積み重ねが、音楽を自然に楽しめる下地を作っています。
一方、そうではないお子さんが「ピアノを習い始めたから」といって、すぐ積極的に練習したり、音楽を心から楽しめるようになるわけではありません。 音楽がまだ生活の中心にない場合、「練習が楽しい体験」になるまでには時間も工夫も必要です。
だからこそ、
- 家庭でどんなふうに音楽に触れているか
- ピアノや音楽が“好き”と思える瞬間がどれだけあるか
- 親子で音楽を一緒に楽しむ空気が自然にできているか
そんな日常の中で、少しずつ「音楽との距離」を近づけていくことがとても大切だと感じています。
ピアノは「自分の中に音楽がある」と感じ始めて初めて、本当に“自分から練習したくなる”もの。教室だけでなく、ご家庭でも「音楽って楽しいね」と話せる、そんな雰囲気づくりが上達への本当の近道かもしれません。
ピアノを弾けるようになるには、楽譜が読めて、リズムが理解できて、音感も備わっている。なぜその方がいいのか?それは弾く人の助けになるからです。ソルフェージュは、音楽の“ことば”を身につける作業。声を出してうたう・聴く・読む・体で感じる――そうした経験を通じて、無理なくピアノの基礎が積み重なっていきます。
しかしそこまでいくまでが、とても時間がかかるのです。まずは先生と慣れ親しむこと。先生の言うことを聞いてくれないとレッスンは始められません。またひとつひとつの作業を楽しいと思わないと進んでいきません。
ピアノを弾くと一言で言いますが、いきなりピアノが始まったら、指をうまく使うまでにあれやこれやと試行錯誤…していたらお子さんはつらいだけです。指をコントロールしてピアノを弾くというのは、そんな簡単なことではないのです。
なお、私は専門的にリトミックは教えていませんが、「体全体で音楽を感じる体験」は、幼児レッスンでもとても意味があります。 ピアノを弾くための準備として、楽器以外の経験――例えば一緒に歌ったり、リズム遊びをしたり――も、しっかりとした土台作りになるのです。
「できるだけ早くから習わせたほうが…」という気持ちもとてもよくわかります。 けれど、短期間で成果を求めたり、すぐに上達を期待するのではなく、まずは音楽やピアノと“仲良くなる”ための「音楽遊び」を一番に考えてもらえたら。 それが、長く音楽を楽しみ続けられる唯一の道だと思います。